2010年11月19日金曜日

座談 創刊号のオビについて

1947

【ひとこと】創刊号には「オビ」がついていた。ごらんのように、特集の目玉は阿部定と坂口安吾との対談で、これをオビに強調した。憶測であるが、オビをつけることには、花森安治と池島信平のあいだで、お互いぎりぎりの意見交換があった筈である。花森はオビをつけることをきらっていた。オビによって、せっかく描いた表紙が、かくれてしまうからである。オビで釣るつもりなら、表紙絵は無用ではないか。

花森は池島に条件をつけて譲歩したのだろうか。オビの右端に、小さな但書がよめる。すこし見づらいが「お買い上げの方は此のビラをお捨て下さい」とある。職人花森のプライドであろう。
花森安治は、これとほぼ同じ趣意の但書を、24年後の昭和46年刊行の自著『一銭五厘の旗』のオビにそえている。 ちなみに当時はオビのことを「腰巻」とも言った。その呼称を下品だと、花森はオビそのものよりさらに嫌っていた。



 
【哀悼】黒岩比佐子さんのご冥福をお祈りいたします。
黒岩さんはブログ『古書の森日記』で2006年5月22日〜26日まで、暮しの手帖創刊号から第5号までとりあげ「花森安治の表紙画を眺めているだけでも楽しい」と書いてくださいました。若くして本の目利き、読み巧者、こころやさしい文筆家を、失いました。ざんねんです。合掌