2011年5月27日金曜日

ふらんす小咄大全 河盛好蔵訳編

1961


書 名 ふらんす小咄大全 世界ユーモア文学全集別巻
訳編者 河盛好蔵(1902−2000)
発行人 古田晁 
発行日 昭和36年12月5日
発 行 筑摩書房
発行所 東京都千代田区神田小川町2−8
印 刷 凸版印刷株式会社
製 本 藤田製本
判 型 B6判 上製函入り 角背ミゾ 平綴じ 本文310ページ
定 価 290円


本体 表紙


【ひとこと】筑摩書房『世界ユーモア全集』全15巻は、昭和35年から37年にかけて刊行された。ほかに別巻が3冊あり、本書はその1冊。あえて別巻をえらんだのは、訳編者が河盛好蔵だからである。

いずれごらんいただくが、河盛好蔵には新潮社からだした『人とつき合う法』『あぷれ二十四孝』がある。モラリストの名を高らしめた好エッセイだが、その装釘も花森はしている。それだけに愉快なのだ。なにせこの『ふらんす小咄大全』を読めばどんな石部金吉も、にやけること必定、そしてそっと周囲を見まわすであろう。運悪くカミさんの目にとまれば「なによ、その変な笑い、いやらしいわねえ」と一蹴されること、これまた必至だからである(経験者のみぞ知る)。

花森語録として「質のいいユーモアの欠けている世界は真っ黒」がつたわっている。しかし小生には、どこか腑に落ちない。ユーモアとか諷刺とかいうものは、むしろ息苦しく生きにくい世界でこそ洗練され、質を高めるのではなかろうか。優れたユーモリストや諷刺家すら弾圧粛清される世界——それが治安維持法下の日本だったのかもしれない。


表紙全体

函 ウラ

【もうひとこと】全集の発行日をたしかめようと奥付をみていたら、おもしろいことに気づいた。タテ長の円の中が訳者のイニシャルで、これが検印代りになっている。本書は河盛好蔵だからY・K、第5巻『当世人気男/ベネット』訳者は吉田健一だからK・Yのごとし。しかし第11巻だけはちがう。やはり訳者丸谷才一のイニシャルS・Mではあるが、印刷した上に、さらに検印紙を貼っている。しかもそれは丸谷才一本人の印鑑ではなく、イニシャルをゴム印でつくって、それをわざわざ捺して貼っているのだ。バカバカしいことをまじめにやってみせる。その手間ひまのかけようが、さすが丸谷だ。


別巻奥付 河盛好蔵のイニシャル

第5巻奥付 吉田健一のイニシャル

第11巻奥付 丸谷才一の検印紙