2011年6月8日水曜日

母の算数 藤森良藏

1944

書 名 母の算数 
著 者 藤森良藏(1882−1946)
発行人 橋本芳藏 
発行日 昭和19年3月20日
発 行 大政翼賛會宣傳部
発行所 東京都麹町区霞ヶ関1−1
印刷人 西川喜右衛門
印 刷 株式会社秀英社
判 型 B6判 並製平綴じ 本文共72ページ
定 価 20銭



表紙ウラ(表2)と扉

奥付

ウラ表紙(表4)

【ひとこと】著者の藤森良藏は戦前、考え方研究社という出版社をおこした数学教育者で、受験参考書出版のさきがけとして知られる。教え方がうまかったのであろう。

本書もまた、花森安治の装釘であるという証拠は、ない。奥付には編輯兼発行人として橋本芳蔵の名がしるされているのみ。当時の橋本は宣伝部副部長であり、花森安治はその下で働いていた。憶測ではあるが、本書の編輯に花森はまったく無縁だった、ともいいがたい。暮しの手帖社の刊行物にくわしい方には、書名からすぐに想起される本がある。それゆえとりあげた。

ところが本書の刊行前、『母の算術』という書名の本があった。算術というよび方こそ古めかしいが、下掲のごとく函入りハードカバー、横山隆一の装釘、本の体裁は翼賛会の『母の算数』よりはるかに立派だ。



1940

書 名 母の算術 
著 者 武井俊一郎(1893−?)
装 釘 横山隆一(1909−2001)
発行人 石山皆男 
発行日 昭和15年11月1日
発 行 ダイヤモンド社
発行所 東京市麹町区霞ヶ関
印刷人 石山皆男
印 刷 松村印刷所
判 型 B6判 函入上製 丸背ミゾ平綴じ 本文共402ページ
定 価 1円80銭


扉 横山隆一

奥付

函 横山隆一

【もうひとこと】『母の算術』の四年後に『母の算数』がでた。前者の内容は、小学校高学年から中学校低学年ほどであるが、後者はあきらかにもっと低く、小学校低学年なみである。これはなにを意味しているのだろうか。教育ママが多かったわけではなく、おそらく戦争の長期化によって、学校教育が質量ともに低下していたからであろう。未来のある子どもたちの教育が、政治家や軍人のつごうで失われては大変なことになる——宣伝部内には、とりわけ幼子をもつ職員には、その憂慮があったとおもう。公教育の不足を、母親をとおして補おうとしたのである。

戦争中の日本を、戦後の日本人はすべて否定してかかる傾向があるが、いまの日本だって十分におかしい。基本的人権も児童憲章も、党派に関係なく国会議員のアタマにない(としか見えない)。罹災地や原発事故周辺地域の子どもたちを守るという未来への責任感が、はたしてあるのだろうか。