2011年8月5日金曜日

女性に関する十二章 中公文庫

1974


書 名 女性に関する十二章 中公文庫   
著 者 伊藤整(1905−1969) 
解 説 奥野健男(1926−1997) 
発行人 高梨茂
発行日 昭和49年6月10日(初版)
発 行 中央公論社
発行所 東京都中央区京橋2−8−7
印 刷 三宅印刷(カバー印刷 株式会社トーブ)
製 本 小泉製本
判 型 文庫版 平綴じ 本文196ページ
定 価 240円(昭和55年8版)


カバー裏

カバー全体


【ひとこと】新書版が出てから20年後の文庫化で、ずいぶんおそいとおもったら、角川書店が昭和35年に装釘を変えて先に文庫化していた。だからこれは本家での復刊みたいなもので、判型と背文字こそちがうが、新書版の花森安治のカバーをそこなわない、白をいかしたデザインにしている。ところで、表紙にもなっているフライパンだが、つぎのような花森安治の談話が残っていた。

——戦争が終ったあと、町を歩くと、露店がダーッと出はじめてきましたね。そこで真っ先に出てきたのは、フライパンです。フライパンが出てきたときなんか、どんなにぼくら気持ちが明るくなったか。(中略)そうして、ぼくは、ここだ、ここじゃないかと思ったんです。台所だ。台所をとにかく北向きからいちばん日の当たるところへ置いたらどうだろう。(中略)つまり暮らしというものがいちばん大事だ。これをほんとうに理屈でなくて、腹の底までわかりあおうじゃないか、そして、その暮らしをこわすものに対して、母親が子どもを襲うものに対しては本能的に立ち上がるように、本能に近く、襲い犯しにくるものに対して拒絶反応を起こすようになれば、ちょっとやそっとでは鉄砲をかつがすわけにはいかないだろう。——「僕らにとって8月15日とは何であったか」1975年毎日新聞社刊『一億人の昭和史4空襲・敗戦・引揚』所収

手であつかう調理道具ばかりであることに、ご注目あれ。ここにも花森安治の思想が宿る。


奥野健男の解説付

奥付と解説最終ページ


【もうひとこと】角川文庫版では解説を瀬沼茂樹がしていた。中公文庫では奥野健男がしている。奥野はこの『女性に関する十二章』を戯文とよび、「伊藤整は今日流行、氾濫している戯文的エッセイの先駆者である」「読者はこの本を読んでさわやかな開放感をおぼえた」と評した。



建築家白井晟一による装釘


【さらにひとこと】中公文庫の本体を装釘したのは白井晟一。白井について、デジタル版日本人名大辞典はこう記載している(コピペ)。

——昭和時代の建築家。明治38年2月5日生まれ。ドイツに留学,ベルリン大などで哲学,建築をまなび,帰国後,建築設計に従事。群馬県松井田町役場,東京浅草善照寺本堂で昭和35年高村光太郎賞,佐世保の親和銀行本店で44年建築学会賞,55年芸術院賞。昭和58年11月22日死去。78歳。京都出身。京都高等工芸(現京都工芸繊維大)卒。著作に『白井晟一の建築』。