2011年10月3日月曜日

象と耳鳴り 恩田陸

1999


書 名 象と耳鳴り   
著 者 恩田陸(1964−) 
装 釘 中原達治
発行人 村木博
発行日 平成11年11月10日
発 行 祥伝社
発行所 東京都千代田区神田神保町3−6−5
印 刷 萩原印刷 
製 本 ナショナル製本
判 型 四六判 上製丸背ミゾ カバー 無線綴じ本文298ページ
定 価 1700円+税


左 中原達治装釘 右 花森安治装釘


【ひとこと】先におことわりすべきは、データに記したように、本書の装釘は中原達治である。とはいえ中原だって、いかにも私の装釘である、とは言い難い。著者あとがきにワケが明らかにされている。

——この短編集をまとめるにあたり、どの短篇をタイトルにするか迷ったすえ、装幀のためにこのタイトルに決めた。私がある日古本屋で一目ぼれした東京創元社の三十年前のペーパーバック、バリンジャーの『歯と爪』。是非これと同じ意匠で作りたいと思ったからである。 この装幀をされたのは花森安治氏だった。たいへんなミステリファンであられた氏が天国で気を悪くしていないことを祈ると同時に、お礼を申しあげたいと思う。また、氏の意匠を使わせていただくことを承諾してくださった東京創元社の戸川安宣社長、氏の長女でいらっしゃる土井藍生さん、完璧に再現してくださったデザイナーの方に深く感謝を捧げたい。——


カバー全体


【もうひとこと】本書には、本家のクライムクラブにあった函がない。そのため装釘した中原は、タイトルのあしらいに苦労したであろう。けれど、うまくおさめている。また、もう一点本家とちがうのは、ウラ面に黒々と管理用バーコードを印刷していることだ。申すまでもなく、書籍へのバーコードの出現は、花森安治なき後であり、花森本人がバーコードを入れて装釘した本は、一冊もない。

バーコードの記載は、むろん中原の責任ではないが、本や雑誌を一般の消費財とおなじ扱いをしている感じが強調されるだけに、本や雑誌にそなわる品格をおとしめている。それはけっして美しいものではない。大貫伸樹さんが先日、本をつまらなくしている原因の一つはバーコードではないかという意味のことを、じしんのブログに書いていた。大げさなとおもうかもしれぬが、あんがい正鵠を射ている気がする。