2013年5月25日土曜日

世田谷美術館 大橋鎭子さん追悼展

世田谷美術館では、大橋鎭子さんを追悼し、『暮しの手帖』表紙絵の原画展を下記のとおり開催しています。従来の企画展のような展示ではありませんが、「3月23日に93歳で逝去された暮しの手帖社社主・大橋鎭子さんを偲んで、ささやかながら追悼の意を込め、当館所蔵の花森安治『暮しの手帖』表紙絵原画(8点)を展示」することに急遽きまったそうです。

特設展示コーナーは観覧無料。花森の原画には、見るたびに新たな発見の喜びがあるでしょう。じっくりご覧ください。絵はとても細密です。読書用メガネをお忘れなきよう。

展示期間:2013年5月21日(火)~6月23日(日)
展示場所:世田谷美術館2階 ライブラリー前
出品作品:花森安治『暮しの手帖』表紙絵原画
世田谷美術館についての詳細は、http://www.setagayaartmuseum.or.jp/


No.1
No.2
No.3
No.4
No.5
No.6
No.7
No.8

上掲は、表紙となって刊行されたもの。 展示している原画は下のとおりです(世田谷美術館作成)。
№ 掲載号数  発行年月   材質、技法
1.1世紀 1号  1948年 9月   紙、水彩
2.1世紀10号 1950年12月  紙、水彩、色鉛筆、鉛筆
3.1世紀19号 1953年 3月   紙、オイルパステル、色鉛筆、鉛筆、スクラッチ
4.1世紀26号 1954年12月  紙、オイルパステル、グワッシュ、スクラッチ
5.1世紀37号 1956年12月  紙、色鉛筆、水彩
6.1世紀40号 1957年 7月   紙、カンヴァスボード、鉛筆、グワッシュ
7.2世紀 1号  1969年 7月  合板、グワッシュ
8.2世紀53号 1978年 4月  カンヴァス、油彩

*美術館の案内とじっさいの展示作品には違いがあるかもしれません。ご確認ください。



暮しの手帖1世紀100号記念に創刊メンバー花束贈呈。
写真右から二人めが鎭子さん(写真の複製転載を禁ず)


花森安治の逝去後、田宮虎彦が鎭子さんにあてた手紙がありました。いちばんの讃辞だとおもえます。以下にひいて、あらためて鎭子さんをしのびます。

《・・・花森君があれだけのことが出来たのは、もちろん花森君が立派だったからには違いありませんが、やはりあなたの協力があったからこそと思います。こんなことを私が言うのは筋違いであり、おかしなことかも知れませんが、花森君が力いっぱい生きることが出来、あのようにすばらしい業績を残したことについての、あなたのお力に対し、あつく御礼申しあげます。》 酒井寛『花森安治の仕事』所収


「暮しの手帖」とわたし 大橋鎭子  暮しの手帖社 2010

鎭子さんは東京生れですが、幼いころ北海道に育っています。おなじ北海道出身で、花森安治の装釘で縁が深かったのが作家の伊藤整でした。伊藤がつくった詩「もう一度」が、なぜかわたしには鎭子さんの著書の表紙絵から聞こえてきます。鎭子さんもまた戦争に青春をうばわれた人でした。

伊藤整 もう一度

みんながあの日の服装で
あの日の顔つきで 落葉松の緑が萌えてゐる道を
笑ひながらもう一度やつて來ないかな。
そのときこそは間違ひなく
本當に生き直したい
あの過ちをすべて とりかへしたい。