2016年3月31日木曜日

花森安治伝(新潮文庫)

文庫版カバーおもて

書 名 花森安治伝 日本の暮しをかえた男
著 者 津野海太郎
解 説 中野翠
装 釘 平野甲賀(カバー装画 花森安治)
発行日 平成28年3月1日
発 行 新潮社
発行者 佐藤隆信
発行所 東京都新宿区区矢来町71
印刷所 大日本印刷
製本所 憲専堂製本
判 型 文庫 本文427ページ
定 価 670円+税


新潮文庫担当者M・Hさんからちょうだいしました。
この本は、津野さんの、もちまえの博識に、じつに緻密な資料検証が加わった、みごとな花森安治の評伝です。なるほど、そうだったのかと、目を開かれることばかり。なにより読みやすく、わかりやすい文章に感銘をうけます。編集者の文章のお手本です。

そんな名著に、拙著『花森安治の編集室』からも引用されています。またしても、うれしさと申しわけなさが入り混じります。二十年前、小生が「津野さんに読んでほしい」と晶文社に拙文をもちこんだのが、拙著刊行のきっかけでした。いまからおもえば、持ち込んだ小生も、引き受けた津野さんも、冒険というか蛮勇でした。むろん小生は、津野さんの懐の大きさ深さに賭けたのでした。津野さんは小生の恩人です。ところがなぜか、あのときからお会いできる機会に恵まれないでいます。

けれども今、あらためて読ませていただいておりますと、遠く離れていても、花森安治をおもう時間は、ずっと近いところで流れていたのを感じました。これも縁というものなのでしょう。 こんかいの文庫化で、買いもとめやすくなりました。戦前に回帰しつつある現在の状況でこそ、ぜひ多くの方に読んでいただきたいものです。


カバーうら・オビ共


【あらずもがなのひとこと】
解説は中野翠さん。中野さんの父上は、花森安治とおなじ明治44年生れなのだそうです。じつは小生の父も同年生れ。小生がこどものころ、いまでは使われなくなった表現に「地震カミナリ火事オヤジ」あるいは「カミナリオヤジ」がありました。星飛雄馬の父の星一徹、あるいは寺内貫太郎みたいな、怒鳴りまくるオヤジは、全国津々浦々、けっして珍しくなく、わが父もその一人でした。犬を飼ってもいないのに、玄関に「猛犬注意」の札をみずから書いて張り付けていた。いまじゃそんなカミナリオヤジも絶滅危惧種。似ても似つかぬ虐待オヤジばかり増殖しているようにおもえるのは、不肖のせがれの杞憂かしら。